2026-01-31
不動産を売却する際、「税金はいったいどれだけかかるのだろう」「複雑な手続きで失敗したくない」と、不安や疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。不動産の売却には、譲渡所得税や住民税など、さまざまな税金や費用が発生します。また、条件によって税金の負担が大きく異なる場合もあります。本記事では、不動産売却時に知っておくべき主要な税金や費用、控除や特例、申告時の注意点など、初心者でも分かりやすく丁寧に解説します。
不動産を売却する際には、さまざまな税金や費用が関わります。まずは、その全体像を整理して確認しましょう。
| 費用・税金の項目 | 該当するタイミング | 概要 |
|---|---|---|
| 印紙税 | 契約時 | 売買契約書に貼付する収入印紙の税。契約金額に応じ、軽減措置もあります。例:1,000万円超5,000万円以下は本則2万円→軽減後1万円。 |
| 譲渡所得税・住民税・復興特別所得税 | 譲渡益発生時(売却翌年の申告時) | 譲渡所得=売却価格-(取得費+譲渡費用)で計算し、所有期間により税率が変わります。 |
| 取得費・譲渡費用 | 売却時全体 | 取得費:購入時の代金・諸費用・減価償却費など。譲渡費用:仲介手数料・測量費・印紙税などが含まれます。 |
印紙税は契約書作成時に必要となる税金で、たとえば1,000万円~5,000万円の売買契約では、軽減措置により印紙税が通常2万円のところ1万円になります。軽減措置は令和6(2024)年から令和9(2027)年まで適用されています。
譲渡所得税、住民税、復興特別所得税は、譲渡所得が発生した翌年の確定申告で納付します。不動産の所有期間が5年以下の場合は合計約39.63%(所得税30%+住民税9%+復興特別所得税0.63%)、5年超の場合は約20.315%(同15%+5%+0.315%)の税率が適用されます。
取得費や譲渡費用は、これらの税金を計算する際に譲渡所得から差し引かれるため、漏れなく把握することが重要です。特に取得費には購入時の代金のほか、減価償却費の計算なども含まれます。
不動産を売却した際に課される譲渡所得税および住民税の計算について、以下の3つのポイントで分かりやすく整理いたします。
| 要素 | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 譲渡所得の計算式 | 譲渡価格―(取得費+譲渡費用)-特別控除 | 取得費(購入代金・仲介手数料など)や譲渡費用(売却時費用)を漏れなく把握することが重要です。 |
| 所有期間による税率の区分 | 5年超(長期):所得税15.315%+住民税5%=20.315% 5年以内(短期):所得税30.63%+住民税9%=39.63% | 所有期間は「売却年1月1日時点」で判定されるため、ぎりぎりでの売却判断は慎重に行ってください。 |
| 譲渡所得がマイナス・特別控除適用時 | 譲渡所得がマイナスになったり特別控除を適用した結果、課税譲渡所得がマイナスとなった場合、課税所得はゼロとなり税金はかかりません。 | 特別控除の適用では申告が必要な場合がありますので、漏れのない確定申告が大切です。 |
順に解説いたします。
まず、譲渡所得は「譲渡価格から取得費や譲渡費用を差し引き、さらに特別控除額を差し引いた額」で算出します。取得費とは購入代金に加えて仲介手数料や改良費などを含み、建物の場合は減価償却費を差し引きます。譲渡費用は売却に伴う費用全般を指しますので、漏れなく把握することが欠かせません。国税庁の定める計算式に則って適切に算出しましょう。
次に、税率の違いについてです。不動産の所有期間が「売却した年の1月1日時点で5年を超える」場合は長期譲渡所得として、所得税15.315%(復興特別所得税含む)と住民税5%、計約20.315%の税率が適用されます。一方、「5年以内」の場合は短期譲渡所得として、所得税30.63%+住民税9%、計約39.63%と、ほぼ倍の税率になる点にご注意ください。
最後に、譲渡所得がマイナス(損失がある場合)や、特別控除の適用によって課税譲渡所得がゼロになった場合は、税金はかかりません。ただし、特例を受けるには確定申告が必要な場合もあるため、忘れず申告手続きを行うことが大切です。
マイホームを売却する際に活用できる「三千万円特別控除」「所有期間十年超の軽減税率の特例」「空き家特例」には、それぞれ適用にあたっての条件や併用できる/できない制度があり、注意が必要です。
| 特例・控除の名称 | 主な適用要件 | 併用の可否や注意点 |
|---|---|---|
| 三千万円特別控除 | 自宅を売ること、親族以外への譲渡、二年前までに同控除を利用していないこと、居住用であること等 | 所有期間十年超の軽減税率とは併用可能。住宅ローン控除などとは併用できない。 |
| 所有期間十年超の軽減税率の特例 | 売却時の一年一月一日現在で家屋・土地ともに所有期間が十年超、自宅であること、前々年や前年前に利用していないこと等 | 三千万円特別控除とは併用可能。他の特例とは併用できない場合あり。 |
| 空き家特例(相続空き家売却控除) | 被相続人居住用家屋を相続、昭和56年5月31日以前築、必要書類の提出・耐震改修や取り壊しの要件など | 相続人が三人以上の場合は控除限度額が減る。必要書類の添付は漏れなく。 |
三千万円特別控除は、実際に居住していた自宅を売却する場合に、譲渡益から最大三千万円を控除できる制度です。ただし、親族への譲渡や、一時的に居住しただけの物件、趣味や仮住まいとして使用していた住宅などは対象外となります。また、過去二年間に同控除やその他の特例(買換えや損益通算など)を受けていると適用できない点にも注意が必要です。住宅ローン控除とは併用できません。居住実態があり要件を満たす場合には、共有名義の場合でも居住者それぞれが最大三千万円の控除を受けられるケースもあります。
所有期間十年超の軽減税率の特例は、売却年の一月一日現在において家屋・土地ともに所有期間が十年を超えている場合に、譲渡所得六千万円以下の部分に対して税率が軽減される制度です。具体的には所得税・住民税を合わせた税率が約十四・二一%となり、六千万円を超える部分については従来の長期譲渡所得税率(約二十・三一五%)が適用されます。この特例は三千万円特別控除と併用可能ですが、住宅ローン控除や買換え特例などには併用できません。申告の漏れがないよう、売却時期や所有期間の確認にも注意を払う必要があります。
空き家特例(被相続人の居住用家屋を相続して売却した場合に譲渡益から一定額を控除できる制度)は、昭和五十六年五月三十一日以前に建築された空き家が対象で、耐震改修や取り壊しを譲渡の翌年二月十五日までに行うなどの要件があります。また、相続人が三人以上の場合には控除上限額が三千万円から二千万円に減額される点にも注意が必要です。所定の書類を確定申告時に漏れなく添付しなければ適用を受けられません。
それぞれの特例は条件が異なり、併用できる場合とできない場合があるため、ご自身の所有形態や利用状況、売却までの経過に応じて、専門家と相談しながら慎重に選択してください。
不動産売却によって譲渡所得が生じた場合、確定申告は原則として必要です。申告期間は、売却(譲渡・引き渡し)が行われた翌年の2月16日から3月15日までとなります。たとえば、2025年中に引き渡しが完了した場合、2026年2月16日~3月15日が申告期間です。なお、最終日が日曜日等にあたる場合、オンライン(e–Tax)での申告は3月15日23時59分まで可能です 。
確定申告の対象となる年を判断する際は、<strong>売買契約日ではなく<譲渡日(=引き渡し・所有権移転が完了した日)を基準とする必要があります。例えば、12月に契約をして翌年1月に引き渡しがあった場合、その譲渡所得は翌年の所得として扱われ、翌々年の確定申告期に申告することになりますので十分に注意してください。
また、税務署から「お尋ね」や照会書が送られてくる場合もあります。譲渡所得が非課税であったり、損失が出た場合でも、特例(例:3000万円特別控除)を適用したい場合には、確定申告が必要です。照会があった場合には、誠実に対応し、申告書類を確認のうえ提出するようにしましょう。なお、確定申告を期限内に行わないと、無申告加算税・延滞税の対象になるため、申告漏れを避けるためにも準備は早めに進めておくことが大切です。
| 注意点 | 内容 |
|---|---|
| 申告期間の把握 | 譲渡日が属する年の翌年2月16日~3月15日が申告期限 |
| 譲渡日の確認 | 契約日ではなく、引き渡し・所有権移転完了日が基準 |
| 照会対応と漏れ防止 | お尋ねへの適切な対応および、特例活用のためにも申告は必須 |
不動産の売却を検討する際には、譲渡所得税や住民税、各種控除制度など、予想以上に多くの税金や手続きが関わります。必要な税金や費用の全体像を知り、計算方法や特例の要件を正しく理解することで、余計な負担を未然に防ぐことができます。売却前から、確定申告や申告時期についても把握しておくと迷わずに進められます。不明点があれば、早めの確認や専門家への相談がおすすめです。